日本の法制度2.0 ~戦略的立法への転換~

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桜内文城 著
ISBN978-4-909870-08-7 C0232
新書判 全240ページ
定価=本体1,000円+税

2019年8月5日発売

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 法律の執行権者である官僚や裁判官は、法律の条文の「解釈」によって、条文の文言がどのようなものであれ、どのような結論をも生み出すことができると、何と東大法学部教授が断言している。法律の執行権者である官僚が作り出す法律は、法解釈の技術で思い通りの結論を導き出せる「魔法の道具箱」になってしまうではないか。事実上、これまで日本には本当の意味での「立法者」が不在だったことを意味する。
 立法こそが、最強の政策実現手段である。最初から諦めていては何も始まらない。

「はじめに 仮説と解決策」より


【著者紹介】
桜内 文城(さくらうち ふみき)
1965年、愛媛県旧吉田町(現宇和島市)生まれ。
宇和島市立明倫小学校、宇和島市立城東中学校、愛媛県立宇和島東高校卒業。中学では剣道、高校では受験勉強に打ち込む。その後、東京大学法学部卒業。在学中は、剣友会に所属し、再び剣道に励む一方、口下手を直すために弁論部に入り、数多くの弁論大会に参加。
1988年から2002年まで、大蔵省(現・財務省)に勤務。1992年、米・ハーバード大学大学院で修士号(公共政策学)、1999年、マレーシア・国立マラヤ大学大学院で博士号(政治経済学)を取得。2002年からは、新潟大学経済学部准教授として公会計の研究。国会で専門分野の説明を行う。
妻・友子(故・櫻内義雄の孫娘)と2001年11月に結婚。2002 年9月には長女、2007年11月には長男に恵まれた。
2007年、故郷に帰り、政治活動を開始。2010年に参議院議員、2012年に衆議院議員として、国政に参与。現在は、公認会計士・税理士。
著書には、『公会計 国家の意思決定とガバナンス』(2004年、NTT出版、第34回日本公認会計士協会学術賞受賞)、『公会計革命 「国ナビ」が変える日本の財政戦略』(2004年、講談社現代新書)、『(仮題)「貨幣と資本」~SNA(国民経済計算体系)のT型勘定分析と金融勘定行列分析~』(近刊予定、東大出版会)がある。


【目次】
はじめに 仮説と解決策
仮説
仮説1 国会議員は法律を作っていない。その代わりに官僚が日本の法律を作っている。
    →第1章、第2章、第3章
仮説2 官僚が作る法律は、その執行の際、必然的に官僚が自らの欲する結論を導き出す「魔法の道具箱」になる。
    →第4章、第5章
仮説3 日本では、実は誰も「戦略」としての「立法」を行っていない。自らの頭で考えることを忘れた官僚が中身のない「空っぽの箱」を量産しているだけである。
    →第6章
解決策
解決策1 官僚と国会議員との役割分担を再定義する。
    →第7章、第8章
解決策2 国会を本物の「唯一の立法機関」にする。
    →第9章

第1章 「岩盤規制」とは何か?
  事例①獣医学部新設
  事例②幼保一元化
  事例③保育士受験資格
  全ての規制には法律上の根拠がある

第2章 日本の法律は誰がどう作っているのか?
  大半を占める内閣提出法案
  建前としての憲法第四一条
  憲法第七二条「議案」は「法律案」を含むか?という論点
  実は、国民の目の届かないところで作られる日本の法制度
  内閣法制局での法令審査と事務次官会議
  官僚による与党政調部会・総務会への「御説明」
  公開の議論の場である国会審議では一文字も修正されずに可決成立する

第3章 議員立法とは何か?
  本当は議員立法と同じく国会議員も予算修正案を提出できる
  【コラム1】憲政史上二度目、議員立法として予算修正案を提出してみた
  瞬殺された幻の予定財務書類付き予算修正案
  「唯一の立法機関」であることを自ら拒否する国会
  【コラム2】国民の権利義務を定める「法規」概念を含まない議員立法
  予算が「法律」でないのは日本だけ
  予算委員会がスキャンダル合戦になるのは戦前からの伝統芸
  同じ国会議員なのに議員立法すらできない野党議員
  【コラム3】震災復興の議員立法にも財務官僚は「全削」してきた

第4章 日本の法制度
  法律、政省令の数が多い
  内容が曖昧で抽象的な法律
  具体的な法規制は府省令と通達に委ねられる
  【コラム4】財務省行政文書管理規則(平成二七年財務省訓令第五号)
  問題が生じたときは「誠実に話し合う」ことで解決する
  『日本人の法意識』
  明治二〇年代に一気に制定された六法
  旧来の慣習法や法意識から遊離した別世界

第5章 東大法学部とは何か?
  欧米の法律学の「輸入」
  【コラム5】東大法学部に入ってみた
  「法科万能」の世紀
  日本では法律学=法解釈学である
  執行権者(官僚・裁判官)の法解釈次第でどんな結論も導くことができる
  万能の法解釈による執行権と実質的な立法権の白紙委任
  【コラム6】司法試験用六法とは何か?
  法解釈学における論理展開
  【コラム7】余は如何にして慰安婦=性奴隷捏造裁判で勝訴せしか
  裁判に至る経緯
  裁判のポイント
  法解釈の技術
  「慰安婦=日本軍の性奴隷」は真実か否か
  裁判闘争記
  認定された事実に応じて自由自在に規範定立できる執行権者(官僚・裁判官)/日本の組織における「空気的判断の基準」
  憲法第九条と集団的自衛権
  【コラム8】原子力損害賠償法と原発事故
  事実さえも捻じ曲げようとした森友決裁文書改竄事件

第6章 「法解釈」だけでは国家経営はできない
  日本の法制度の問題点
  立法は戦略、法令の解釈・適用は戦術である/戦略と戦術
  ガバナンス・レベルの意思決定とマネジメント・レベルの意思決定
  日本では、実は誰も「戦略」としての「立法」を行っていない

第7章 官僚の仕事とは何か?
  財務官僚になってみた
  財務官僚はなぜ東大法卒だらけなのか?
  そもそも立法は官僚の仕事なのか?
  ジェネラリストとスペシャリスト
  立法=「戦略」的意思決定
  財務官僚には法解釈能力に加えてマクロ経済学、会計学等の専門能力が必要
  財務官僚の残念な発想
  現金主義・単式簿記の財政法の呪縛
  【コラム9】帳尻合わせの特例公債法
  【コラム10】財政構造改革法の凍結

第8章 国会議員の仕事とは何か?
  国会議員(衆議院議員・参議院議員の両方共)になってみた
  国会議員の仕事は「立法」である
  社会の進むべき方向性を見定める
  政策「課題」の発見
  立法「目的」の設定
  経済学、会計学、科学技術等のスペシャリスト(専門家)の衆知を集める
  「世代間格差を是正するための公的年金制度及び医療保険制度の改革の推進に関する法律案」
  立法=最強の政策実現手段による「解決」

第9章 国会を本物の「唯一の立法機関」にする方法
  日本の法制度を再構築する
  国家のガバナンスの仕組みを定める憲法
  国会議員と官僚の役割分担を明らかにする/「統治責任者(Those charged with governance)」としての国会=立法権者
  マネジメントとしての内閣=執行権者
  立法の質を上げる
  議院内閣制である以上、全ての法律案を議員立法とする/内閣法制局を廃止し、衆議院法制局と参議院法制局に分属させる
  政省令、通達の文言も国会に報告し、チェックさせる
  国会での官僚答弁を全面禁止する/政務三役(大臣・副大臣・政務官)が官僚に頼らず責任を持って答弁する
  法律案審議ができる能力は最低限必要
  法律案の逐条審査を再導入する
  法案審議の中で与野党が是々非々で修正協議を行う
  大切なのは立法を官僚に丸投げしないこと
  文言の定義を明確にし、できるだけ解釈の余地のない文言を使うこと
  法制度の全面的な整理整頓/(全ての法律の施行一〇年後に廃止・改正・存続を国会で審議すること)
  有権者のニーズに真摯に耳を傾けること

おわりに