人間と人工知能-文明論的考察-

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片岡寛光 著
ISBN978-4-909870-13-1 C0230
新書判 全288ページ
定価:1,320円(本体1,200円+税10%)

2020年1月6日発売

早稲田大学名誉教授が人工知能、シンギュラリティの到達による「機械によって支配される」という憂言を喝破する!
人工知能は「人間の人間による人間のための道具」である!


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 機械が人間と同じ状態になれば人間を越えるのも時間の問題であり、そこに現れるのはシンギュラリティであると主張する専門家はシンギュラリタリアンと呼ばれる。そこにおいては人間を越えることとなった人工知能によって、人間は機械の中で永遠の生命を与えられ、積年の諸問題を一気呵成に解決してもらい、人類を苛み続けてきた苦痛から解放される。これで天国に昇ったと思いきや、彼らを待ち受けていた運命はもはやホモサピエンス・サピエンスではなくなり、人工知能によって支配され、奴隷の如く酷使される状態であった。天国に昇ったと思った瞬間地獄に突き落とされたようなものである。
 だが、機械には欲望も意志も無いのであるから、人間を支配するという目的は何処から得るのであろうか。それは単にダーウィンの進化論が勝ち残ったものが支配するとしたことの受け売りであるとしか思われない。
 そこまでは譲るとしても、支配によって何を実現しようとするのであろうか。
 人間が目的を抱くのは、願望や本能的欲求が無限であるのに、それを充足するための手段には限界があるからである。そこで人間は目的を絞り、優先順位をつけなければならない。だが、コンピューターの機械には願望も本能もないのに、資源は無尽蔵であると一応仮定することが出来る。そうなると、効用関数も成り立たない。

「プロローグ」より

【著者紹介】
片岡 寛光(かたおか ひろみつ)
1934年、北海道札幌市円山出身。政治学博士(早稲田大学)。
早稲田大学名誉教授・名誉評議員。中国国家行政学院名誉教授。日本オンブズマン学会名誉理事長。
早稲田大学第一政治経済学部卒業、同大学院政治学研究科修士課程・博士課程修了。カリフォルニア大学バークレー校に留学。ワルドー、ウォーリン、セルツニック、ベンディクスらに師事。
東海大学基礎社会科学研究所研究員。早稲田大学助手、専任講師、助教授を経て教授。早稲田大学政治学部長、大学院政治学研究科委員長、公共経営研究科委員長、早稲田大学学生部長兼学生生活センター所長、現代政治経済研究所所長。日本行政学会理事長、国際行政学理事、日本オンブズマン学会理事長、日本学術会議会員、人事院参与その他。東海大学アメリカンフットボール部部長、早稲田大学水泳部部長、野球部部長、合気道会会長、雄弁会会長、北海道学生会会長。
『行政国家』、『行政の設計』、『内閣の機能と補佐機構』、『行政学の要点整理』、『国民と行政』、『行政の構造』、『官僚のエリート学』、『職業としての公務員』、『責任の思想』、『公共の哲学』、『国民リーダー 大隈重信』、『大リーダーの世界』、『現代国家論』、『リーダーの人間学』など。




【目次】
緒言
プロローグ
第1章 文化的創造の産物としての人工知能
  1 シンギュラリティの虚実
  2 人類の起源と脳の働き
  3 狩猟採集社会から農業社会へ
  4 「創造の原理」としての文化の発達
  5 文明と文化
  6 黎明期の国家
  7 ノア・ハラリのデータ(至上)主義
  8 人間の文化的創造の産物としての人工知能

第2章 第四次産業革命とコンピューター小史
  1 第四次産業革命前史
  2 コンピューター小史
  3 人工知能AIの諸段階
  4 IT産業の隆盛と国家の反応

第3章 人間の存在と道具としての機械
  1 人間の存在と文化的創造の原理
  2 人間の限界
  3 機械は人間を凌駕しても同じにはならない
  4 コンピューターの長所と短所
  5 人間行動と機械行動の違い
  6 超人工知能に至る複数の経路
  7 コンピューターの生産過程
  8 コンピューター機器の「財」としての性格

第4章 人工知能の光と陰
  1 ゲームにおける機械の勝利の真因
  2 ビッグデータとプライバシー
  3 ロボットによる労働代替の虚実
  4 ビットコインの不思議
  5 人工知能AIは生産性を向上させるか

第5章 経済・社会システムと人工知能
  1 資本主義は生き残れるか
  2 「資本なき資本主義」への変容
  3 国民国家とグローバリゼーション
  4 米中経済戦争

第6章 人工知能は人間リーダーに代わりうるか
  1 人間リーダーのモデル
  2 信頼を支える理性、感性および徳
  3 機械と理性、感情および倫理
  4 機械と人間とは異種同形である
  5 人工知能は目的をどこに求めるのか
  6 「シングルトン」は実現可能か
  7 人工知能は責任の主体となり得るか
  8 人間リーダーと人工知能

エピローグ