日本の安全保障法制入門 増補版

9784909870438.png鈴木 和之 著
ISBN978-4-909870-43-8 C2032
A5判/全320ページ
定価:2,970円(本体2,700円+税10%)
2021年12月16日発売

筆者は入隊以来、法務幕僚・教官として勤務し、実務者の視点から纏め上げられた実務者必携書!! 2015年の平和安全法制公布後の初版より施行後の運用に合わせて修正された増補版です。 我が国の安全保障法制の経緯、法律の適用を平易に解説、豊富な脚注を元に検証することができ教材として適任です。

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【増補版刊行にあたって】
 2015年12月に初版を刊行してから、約6年が経過し、この度4回目の改版の機会を頂きました。第3版までは、主として新たに整備された法令や国会答弁等を加えるとともに、一部の記述を修正・追加するのみにとどめていました。
 しかし、この間の安全保障環境の変化は大きく、特に中国の台頭は目覚ましいものがあり、米国との対立はもはや武力を用いない戦争と言わざるを得ないような状況になりました。社会主義経済圏を構築しながら、資本主義国との競争に敗北して崩壊したソ連の教訓から、中国は、世界の工場として資本主義国間のサプライチェーンに堅固に組み込まれることにより、自国の経済力を高め、その経済力を背景に国際的な影響力をさらに強化しようとしています。
 また、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大において、マスクやワクチンといった国民の生活に不可欠な物資や身体・生命を守る医薬品等が生産国の影響力を強める「武器」として用いられ、これらの生産を国外に頼ることの問題を浮き彫りにしました。
 一方、同感染症拡大に際して、国内においては、欧米の体制と異なるにもかかわらず、「都市封鎖(ロックダウン)」といった日本の法体制では決して実施することができないような用語が盛んに用いられました。
 このような状況を鑑み、今回は、今までどおり最新の内容を加えるのみにとどまらず、本書が多くの方に資料として使用されていることを踏まえて、さらにその内容を充実させるため、①第2次世界大戦直後の重要な文書の追加、②日本の安全保障法制を理解する上で必要な領域等に関する事項の追加、③国家緊急権に関する事項の追加、④経済安全保障に関する事項の追加等、大幅に加筆しました。そのため、今回の改版については、今までのようにその回数を示す「第4版」とはせずに、「増補版」としました。
 上記のような事項の追加により、頁数は若干増えましたが、それにより皆様の日本の安全保障法制に関する知識をさらに深めて頂くことができれば幸甚です。
 なお、増補版の刊行に際して、今回も粘り強く丁寧な校正をして頂いた内外出版株式会社の皆様にも心より感謝申し上げます。

2021年10月
鈴木 和之


【著者】
鈴木 和之(すずき かずゆき)
昭和37年東京都生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。防衛大学校総合安全保障研究科修了(安全保障学修士)。昭和60年陸上自衛隊に一般幹部候補生として入隊以来、主として法務職域で勤務。この間、師団司令部、方面総監部、陸上幕僚監部、小平学校、富士学校、イラク復興業務支援隊等において、法務幕僚・教官として勤務する中、実務を通じて国際人道法の研究を重ね、日本において、実務者の視点から国際人道法の参考書の必要性を痛感し、2013年に「国際人道法ハンドブック」(内外出版)執筆。論文としては、「武力紛争法の適用の始期―暴力行為の烈度問題を中心に」(日本防衛学会、『防衛学研究』第31巻(2014年7月))がある。現在、陸上自衛隊小平学校法務教官室長を最後に陸上自衛隊を退職し、旭日産業株式会社に勤務。


【目次】
増補版刊行にあたって
はじめに
凡例

第1章 日本の安全保障法制の基本的事項
第1節 日本国憲法の平和主義と第9条
  第1款 第9条成立の経緯
  第2款 第9条に関する政府解釈
  第3巻 第9条と自衛権
第2節 日本国憲法と緊急(非常)事態
  第1款 国家緊急権
  第2款 各国憲法における国家緊急権
  第3款 大日本帝国憲法における国家緊急権
  第4款 日本国憲法における国家緊急権
  第5款 個別法における緊急事態等
第3節 安全保障法制の枠組
  第1款 主要な安全保障関連法の制定・改正経緯
  第2款 安全保障に関する組織法
  第3款 安全保障に関する作用法
  第4款 安全保障に関する公務員法
第4節 日本の安全保障政策
  第1款 国家安全保障戦略
  第2款 防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画
  第3款 日米安全保障体制
  第4款 その他の政策

第2章 日本の安全保障に関連する主要な組織
第1節 国家安全保障戦略
  第1款 国家安全保障会議創設の経緯
  第2款 国家安全保障会議の所掌事務
  第3款 国家安全保障会議設置法の概要
第2節 防衛省・自衛隊
  第1款 防衛省・自衛隊創設の経緯
  第2款 防衛省・自衛隊の組織

第3章 自衛隊の任務と行動
第1節 自衛隊の任務と行動の整理
  第1款 自衛隊の任務の包括的根拠
  第2款 自衛隊の任務と行動の関係
第2節 隊法第3章第1項の任務(本来任務)
  第1款 我が国の防衛(主たる任務)
  第2款 公共の秩序維持(1項の従たる任務)
第3節 隊法第3条第2項の任務(2項の従たる任務)
  第1款 1号任務(重要影響事態案安全確保法に基づく行動)
  第2款 2号任務(国際連合平和維持活動、国際連携平和活動、国際緊急援助活動等)
第4節 100条任務(付随的な業務)
  第1款 土木工事等の受託
  第2款 教育訓練の受託
  第3款 運動協議会に対する協力
  第4款 南極地域観測に対する協力
  第5款 国賓等の輸送
  第6款 合衆国軍隊に対する物品又は役務の提供
  第7款 豪州軍隊に対する物品又は役務の提供
  第8款 英国軍隊に対する物品又は役務の提供
  第9款 フランス軍隊に対する物品又は役務の提供
  第10款 カナダ軍隊に対する物品又は役務の提供
  第11款 インド軍隊に対する物品又は役務の提供
  第12款 不発弾等の処理
第5節 平時における武器の使用
  第1款 武器等防護のための武器の使用
  第2款 自衛隊の施設の警護のための武器の使用
  第3款 米軍等の武器等の防護のための武器の使用

第4章 各種事態と自衛隊の行動及び権限
第1節 各種事態と適用が可能な法令及び規定
第2節 平素における自衛隊の行動及び権限
  第1款 駐屯地・基地警備等
  第2款 海上警備行動
  第3款 弾道ミサイル等破壊措置
  第4款 在外邦人等の保護措置及び輸送
第3節 各種事態における自衛隊の行動及び権限
  第1款 重要影響事態
  第2款 緊急対処事態
  第3款 武力攻撃予測事態
  第4款 武力攻撃事態
  第5款 存立危機事態
第4節 武器の使用と武力の行使
  第1款 武器の使用と武力の行使の相違
  第2款 各種の武器の使用についての整理

第5章 防衛省職員と自衛隊員
第1節 防衛省職員と自衛隊員の関係
第2節 自衛隊員
  第1款 自衛官と事務官等
  第2款 予備自衛官等
  第3款 任免
  第4款 分限及び懲戒
  第5款 服務
  第6款 罰則
  第7款 秘密保全
第3節 給与
  第1款 防衛省職員給与法
  第2款 防衛省職員給与法の概要

おわりに