分断・多元化世界と国際関係

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金沢工業大学国際学研究所 編
A5判上製本 全326頁
ISBN978-4-909870-69-8
定価:3,190円(本体価格2,900円+税10%)

令和6(2024)年2月24日発売開始

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目 次

まえがき

第1部 分断し多元化する国際秩序

第1章 海洋の安全保障をめぐる国内法と国際法の諸相
    ―中国海警法の「武器使用」規定の分析を中心に―(森川 幸一)
I はじめに
Ⅱ 「武器使用」規定に関する国会答弁
Ⅲ 「武器使用」規定の構造と適用可能な国際法
1 中国海警法の「武器使用」規定の構造
2 「武器使用」に適用される国際法
Ⅳ 関連する国際判例の検討
1 スペイン対カナダ漁業管轄権事件(管轄権)(1998年)
2 ガイアナ対スリナム海洋境界画定事件(2007年)
3 ウクライナ艦船抑留事件(ウクライナ対ロシア)
  (暫定措置命令)(2019年)
4 ウクライナ艦船抑留事件(UNCLOS附属書VII仲裁裁判)
  (先決的抗弁)(2022年)
5 「武力の行使」と「実力の行使」の区別基準
Ⅴ むすびに

第2章 フィンランドのNATO加盟2022-23年
    ―スウェーデンと共に、ロシアとは断絶せず―(稲葉 千晴)
Ⅰ ロシアによるウクライナ侵攻の衝撃:はじめに
Ⅱ 歴史的背景
Ⅲ フィンランドとスウェーデンの安全保障体制
Ⅳ フィンランドNATO加盟の歩み:2022年2月~7月
Ⅴ ロシア人への観光ヴィザ発給問題
Ⅵ NATO加盟後の行方:結びに代えて

第3章 米中対立下の国際経済秩序
    ―経済安全保障とルールに基づく国際経済秩序の模索―(神田 茂)
Ⅰ はじめに
Ⅱ 米中関係と両国の対立激化
1 米国の対中政策
2 米国(トランプ政権・バイデン政権)の主な対中措置
3 中国の主な対米措置
Ⅲ 米中対立と主要国・地域の動き
1 EUとASEAN諸国の動き
2 日本の動き
Ⅳ ルールに基づく国際経済秩序と日本の取組
1 WTOの発足とドーハ・ラウンド交渉の停滞
2 メガFTAによるルール形成の活発化
3 電子商取引・デジタル貿易におけるルール形成(WTOとFTA)
 
4 WTO紛争解決手続きをめぐる動き
5 米国の中国等に対する経済的規制措置とWTO協定との整合性
 
6 経済安全保障の確保とルールに基づく国際経済秩序
Ⅴ 終わりに

第4章 現代マレーシア政治の構造と展望
    ―民主主義と権威主義の相克―(鈴木 隆)
はじめに
Ⅰ ブミプトラ政策下の国民統合
Ⅱ マレーシア型開発体制の構造と特質
Ⅲ 市民社会の萌芽と成熟
1 経済発展と市民社会
2 スルタン制度の再編と市民社会
3 複合社会のなかの市民社会
Ⅳ 民主主義と権威主義の相克
1 ナジブ政権の腐敗と政権交代
2 泥沼化する権力闘争と混迷する政治
3 アンワル政権の誕生と岐路に立つ民主主義
おわりに 複合社会における民族融和と民主化の行方

第2部 転換期に直面する安全保障


第5章 我が国における能動的サイバー防御の構築に伴う法と組織
    ―米国との比較を踏まえた基本的検討(永野 秀雄)
Ⅰ はじめに
Ⅱ 米国における前方防衛とは何か
1 2018年国防総省サイバー戦略
2 米国サイバー軍構想
3 「米軍統合文書3-12 サイバー空間作戦」からの示唆
4 前方防衛の具体的内容
5 2023年国防総省サイバー戦略(ファクトシート)の公表
6 米国において前方防衛を担当する国防総省の行政機関
Ⅲ 米国における前方防衛に関する中心的な法令
1 2019会計年度国防授権法第1632条「国防長官がサイバー空間に
  おける軍事行為又は作戦を実施する権限の承認」
2 2019会計年度国防授権法第1642条「サイバー空間におけるロシア
  連邦、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国及びイラン・
  イスラム共和国による攻撃に対する積極防衛」の中心的規定であ
  る第(a)項第(1)号の意味
3 2020会計年度国防授権法に規定された連邦議会上下院の軍事
  委員会への報告義務
4 2021会計年度国防授権法第1720条「サイバー・ハント・フォワード
  作戦に関する枠組み」
5 2022会計年度国防授権法第1509条「サイバー態勢に関する評価
  及び作戦上の想定並びに目標設定戦略及び支援能力の開発」
 
6 2023会計年度国防授権法第1506条「国防総省における国防サイバー
  国際戦略と、国防戦略及び国防総省サイバー戦略との整合性」
 
7 トランプ大統領による国家安全保障大統領覚書第13号
Ⅳ 米国の前方防衛に関する国際法上の妥当性
1 米国の前方防衛に関する国際法上の対抗措置としての評価
2 国際法における平時のサイバー諜報と考えられる継続的従事
  についての検討
Ⅴ 我が国における「能動的サイバー防御」の意義とこれを担うべき
  行政機関に関する検討
1 我が国における「能動的サイバー防御」の内容
2 我が国で能動的サイバー防御を担うべき行政機関に関する検討


第6章 北朝鮮の核兵器開発の経緯と米朝交渉の含意
    ―核保有阻止の失敗の背景―(寺林 裕介)
Ⅰ はじめに
Ⅱ 北朝鮮の原子力の平和利用と朝鮮半島非核化共同宣言
1 プルトニウム型の原子力開発――1950-90年代
2 核疑惑に関する米朝協議の開始
3 北朝鮮をめぐる国際情勢の変化
4 在韓米軍の核兵器撤去とIAEA保障措置協定への署名
5 朝鮮半島非核化共同宣言の合意内容
Ⅲ 第一次核危機:核カードを利用した瀬戸際外交
1 IAEAによる核査察の経緯
2 NPTからの脱退表明
3 ソウル火の海発言から米朝枠組み合意へ
4 米朝枠組み合意の内容とその評価
Ⅳ 小括――北朝鮮にとっての核保有への誘因
Ⅴ 第二次核危機:六者会合による多国間交渉の試み
1 ウラン型の核開発――2000-10年代
2 核危機の発端と六者会合の形成
3 六者会合のプロセス
4 共同声明の採択と初の核実験実施
5 共同声明の段階的履行措置
Ⅵ 北朝鮮の非核化をめぐる米朝交渉
1 2.29閏日合意
2 北朝鮮の核政策と核実験
3 米朝首脳会談実現までの経緯
4 米朝首脳会談の合意内容
Ⅶ おわりに――核保有国・北朝鮮の今後

第7章 中国に対する「脅威対抗型」へと再定義された日米同盟
    ―台頭する中国への対応に揺れ動いた日米関係―(宇佐美 正行)
Ⅰ はじめに
Ⅱ 米中関係の動揺と第二次安倍政権の位置づけ
1 パワーと脅威の均衡の視点から見た日本の同盟政策
2 米中軍事バランスの変化と安倍政権の過渡期的特性
Ⅲ 再定義の準備を整えた第二次安倍政権
1 安保関連法制定に至る国際情勢の変化と日本の対応
  ―その狙いは何処にあったのか
2 東アジア政策をめぐる安倍政権とオバマ米政権との思惑の
  異なり
3 トランプ政権の誕生と修正を余儀なくされた安倍路線
4 脅威対抗型の「安保戦略三文書」への橋渡しとなった30大綱
5 第二次安倍政権期の同盟強化の枠組みと台湾有事
Ⅳ 「脅威対抗型」へと変貌する日米同盟―菅・岸田両政権の同盟
  強化
1 転機となった菅・バイデン首脳会談
2 岸田政権の防衛力の抜本的強化と自民党提言
  ―「脅威対抗型」の防衛戦略へ
3 「安保戦略三文書」―日米同盟再定義の区切りとなった戦略文書
 
Ⅴ 結びに代えて―再定義された日米同盟が抱える課題

あとがき ―人間研と国際研の40年、そしてその先へ―(櫻川 明巧)