市場化時代の経済と安全保障 改訂増補版

叢書 日本の安全保障 第五巻
市場化時代の経済と安全保障 改訂増補版

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A5判 全366頁
定価=2,200円(本体2,000円+税)
ISBN978-4-909870-29-2

著者 関井裕二(金融アナリスト)

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2008年5月に叢書『日本の安全保障』シリーズの第5巻として執筆された『市場化時代の経済と安全保障』の改訂増補版。
初版では通貨危機やエネルギー問題といったことを「市場の暴力」という観点から主に論じた。グローバリゼーションの広がりとともに「市場経済化」が全世界的に進んだことから生じた脅威は、国家や軍事力に視点を置いた安全保障論だけでは解説できない新たなファクターであったからである。

この改訂増補版では、以降に発生した東日本大震災、コロナ、地球温暖化、食糧安保といった諸問題について追加した増補版となっている。
これにより金融危機、エネルギー問題に加え、自然災害、ウイルス、環境問題、食料問題について解説することとなった。非軍事的な安全保障と考えられる問題全般をカバーし、より広い視点から論じた1冊である。


目次

はじめに

改訂版によせて

第一章 市場化時代における安全保障

第一節 拡大する安全保障概念―軍事的脅威から新たな脅威へ
一 安全保障概念の変容
二 新たな脅威の出現
三 新しい脅威の種類とその特性
四 新しい脅威への対応

第二節 冷戦後に出現した経済・金融における脅威
一 第二次大戦後の経済体制
二 社会主義経済体制の終焉
三 グローバリゼーションの出現
(一)グローバリゼーションの実態 /(二)ボーダレスエコノミーとの相違点 /(三)グローバリズムとアメリカニズム /(四)市場主義とグローバリゼーション

第三節 グローバリゼーションの諸側面
一 グローバリゼーションのプラス面
二 グローバリゼーションのマイナス面

第四節 市場経済化と国家の関係
一 国際政治におけるアクターの変化
二 国家の監督下に入らないアクター
三 レジームなき国際金融の構造

第二章 新たな脅威としての金融危機―アジア通貨危機の検証

第一節 アジア通貨危機の歴史的意義
一 アジア通貨危機の発生と終息
二 アジア通貨危機の意義

第二節 アジア通貨危機の経過
一 通貨危機の発生
二 通貨危機の伝染
三 通貨危機前の経済概況
四 タイの通貨危機
(一)通貨危機の発生 /(二)資本自由化の問題 /(三)通貨危機への対応 /(四)対応策の軌道修正
五 韓国の通貨危機
(一)通貨危機の発生 /(二)IMF支援策の内容 /(三)金融部門改革 /(四)構造改革の是非
六 インドネシアの通貨危機
(一)通貨危機の発生 /(二)IMF支援策の内容 /(三)スハルト後の経済・金融情勢

第三節 アジア通貨危機の原因
一 アジア通貨危機に対する視点
(一)対立する二つの見解 /(二)IMFの見解 /(三)日本の見解 /(四)経済学者の見解
二 通貨危機の原因
三 危機発生前のアジア諸国の経済構造
(一)通貨危機の背景 /(二)短期資金の問題 /(三)為替制度の問題 /(四)通貨危機の伝染を生んだ背景
四 ヘッジファンド犯人説の真偽
五 国際金融システムの問題
(一)市場経済の不安定性 /(二)通貨危機に見られた市場の失敗
六 途上国における資本自由化の問題

第四節 アジア金融危機への対応
一 IMFの危機対応の諸問題
(一)IMFの危機対応の姿勢 /(二)IMFのコンディショナリティ /(三)IMFプログラム策定の流れ /(四)財政・金融の引き締め政策の是非 /(五)不良債権処理の是非 /(六)経済、社会の構造問題への対応
二 IMFの対応への反証
(一)マレーシアの独自の対応 /(二)マレーシアの対応策の教訓
三 日本の危機対応
四 東アジアの地域金融協力への流れ

第五節 アジア通貨危機の波及、その後の影響
一 アジア通貨危機の波及
二 通貨危機の政治的、社会的影響
三 インドネシアにおける政治、社会の混乱
(一)インドネシアの社会構造 /(二)社会秩序の崩壊 /(三)テロリズムの発生
四 海上におけるパワーバランスの変化

第三章 エネルギー権益をめぐる諸問題

第一節 国際石油市場の変遷
一 第一次石油危機の発生
(一)第一次石油危機の勃発 /(二)消費国の石油危機への対応 /(三)石油危機時のパニック現象
二 第二次石油危機の発生
三 石油危機以降の国際石油市場
(一)OPECの石油支配力の低下 /(二)市場化時代の始まり /(三)産消対話の始まり
四 市場化時代における石油価格の形成

第二節 アジアのエネルギー問題
一 アジアのエネルギー動向
二 中国の石油動向
(一)中国の石油輸入国化 /(二)積極的な海外進出 /(三)東アジアのシーレーン問題
三 不十分な備蓄体制

第三節 国際石油市場を動かす主要国の動き
一 国際石油市場の鍵を握る中東
(一)不安定な中東情勢 /(二)サウジアラビア情勢 /(三)イラク情勢 /(四)イラン情勢
二 アメリカの中東政策
(一)アメリカ中東政策の基本 /(二)九・一一後に加わった新たな目的
三 ロシアの石油政策
(一)ロシア石油産業の復活 /(二)プーチン政権の石油政策

第四節 エネルギー権益をめぐる紛争
一 中国のエネルギー権益確保の動き
(一)海洋進出の動き /(二)東シナ海のガス開発 /(三)南シナ海における動向
二 ロシアによる資源の国家管理
三 資源ナショナリズムの再来
四 中国のレアアース禁輸事件

第五節 エネルギー資源をめぐる新たな動き
一 脱石油の動き
二 有望な天然ガス資源
(一)天然ガスの利点 /(二)アジアにおける天然ガス市場
三 石油の産消対話の進展
四 原子力エネルギー見直しの動き
五 東アジアにおけるエネルギー協力の動き
六 シェールオイル革命―アメリカの石油・天然ガスの輸出国化
七 世界的な環境意識の高まり

第四章 自然災害を考える―東日本大震災の教訓

第一節 東日本大震災の複合的性格
一 地震・津波―岩手県・宮城県の場合
二 原発事故―福島県の場合

第二節 地震・津波の被害とその後の対応
一 巨大地震発生と自衛隊の迅速な対応
二 被害の傷跡と復興

第三節 福島第一原発事故
一 原発事故の経緯―当面の危機収束まで
二 女川原発、福島第二原発との比較

第四節 東日本大震災が与えた教訓・課題
一 自然災害をどう捉えるか―地震予知は可能か
二 「想定外」をどう考えるか
三 福島原発事故後の日本のエネルギー事情
四 再生可能エネルギー・太陽光発電の問題点
五 エネルギーのアセットミックス―原発再稼働の是非
六 非常事態における専門家の役割

第五章 ウイルスという脅威

第一節 新型コロナウイルス感染とその対応
一 新型コロナウイルスの発生から第一波収束まで
二 日本の対応と海外の対応の比較
(一)日本の新型コロナ対応 /(二)海外の新型コロナ対応 /(三)新型コロナ感染の被害に対する経済対策
三 教訓と今後への対応

第六章 食料問題と「地球温暖化問題」についての一考察

第一節 食料安全保障の問題点
第二節 「地球温暖化問題」の問題

第七章 グローバリゼーションの進展と国家の復権

第一節 新たな脅威としての「市場の暴力」
一 アジア通貨危機のその後
二 政治の安定と経済発展―インドネシア、ロシア
三 現在の東アジアのエネルギー情勢
四 中国の台頭と市場経済
五 米中覇権争いの行方

第二節 市場化時代と国家の役割の見直し
一 市場経済と国家の役割
二 資源ナショナリズムにみる国家の復権

第三節 東アジアの地域協力の行方
一 進展する東アジアの地域金融協力
二 東アジアの地域的エネルギー協力
三 アジアの地域協力機構の行方

第四節 危機を深化させる「市民の暴力」
一 デマによる社会の混乱
二 専門家という名のデマゴーグ

おわりに

参考文献

索引